重圧を力に“逆転”の日本一 創部初2季連続全国V
伝統の矢、2季連続で日本一射抜くー。全国高校総体(インターハイ)弓道競技の女子団体戦で、豊橋商業(大河内遥香監督)が5度目の優勝を飾った。夏の全国制覇は2016年の中国総体以来10年ぶり。冬の選抜、夏のインターハイと2大会連続優勝は創部以来初の快挙▶︎「冬の女王」「古豪愛知の県代表」などの肩書きを持って乗り込んだが、頂きまでの道のりは決して平坦ではなかった。それでも重圧を力に、試練をチーム力に変え、さん然と輝く金字塔を打ち立てた▶︎男子団体戦に出場した桜丘は予選を突破し、ベスト16だった。
豊橋商業高弓道部女子
インターハイ弓道競技は今月1日、和歌山県田辺市で開幕。男女団体戦は2~4日に行われた。豊橋商業の女子団体は1番良知ももかさん(3年、東陽中出)、2番菅谷心愛さん(3年、南稜中出)、3番本間心乃華さん(2年、豊川中部中出)、4番長谷部柚那さん(3年、豊橋北部中出)、5番吉田藍さん(3年、東陽中出)、控え林羽南さん(3年、豊橋中部中出)の布陣。
女子団体戦には48校(チーム)が出場。豊橋商業は予選20射10中で通過すると、決勝トーナメントから林さんを4番で起用した。
決勝T一回戦で益田翔陽(島根)を15ー14、二回戦で清真学園(茨城)を15ー9、準々決勝で島原(長崎)を15ー10で退けると、準決勝で川和(神奈川)に14ー13で競り勝った。
決勝は、前年度の優勝校で予選トップ通過(16中)の宇部フロンティア大付属香川(山口)。2025年度の夏と冬のチャンピオンが対峙する構図となった。1人4射の同時進行。宇部付香川がやや先行する形で展開し、3巡目で12ー12の同点。豊橋商業が4巡目に入る前に宇部付香川はすでに終了し、トータル15中で豊橋商業の結果待ち。命運を懸けた4巡目。1、2番が的中させて背中を捉えると、4番林さんが当てて並んだ。残すは1本。5番の吉田さんは昨夏のインハイで団体と個人に出場した実力者。熱視線と水を打ったような静寂の中、「ズバッ」と射抜く音だけが会場に響いた。
的中数で追い続け、最終コーナーの4巡目に“まくって刺して”の逆転Vだった。「おち」を務めた吉田さんは「心臓の鼓動が聞こえるくらい緊張したけど、普段の練習を思い出して冷静に射ることができた」。一礼して射場を後にすると、緊張から解放された安堵(ど)と達成感で皆、涙が止まらなかった。

土壇場で生きた「信じる力」
大前(1番)を務め、吉田さんとともに決勝で4射皆中した主将の良知ももかさんは「実力だけじゃない、見えない何かが力を貸してくれた」と感慨深げに語る。1チーム3人制の選抜は勢いを追い風に駆け上がった。集大成となる5人編成のインターハイは層の厚さに加え、より技量や統制力、そして忍耐力が求められる。振り返ると、薄氷を踏むような場面が何度も続いた。
県総体。上位4校による2次リーグで3戦全勝して全国を決めたが、豊田西との事実上の決勝は1本差。この1本が逆だったら、選抜の覇者が地区予選で姿を消していたことになる。続く東海大会は静岡の富士宮西に敗れ3位。「心と体のバランスが崩れていた」と唇をかんだ。
インハイに入っても試練は続く。予選10中は例年なら次に進めない的中数だ。昨年の突破ラインが11中だったことを考えると、帰り支度をはじめてもおかしくない。女神が仕組んだのか、彼女たちの持つ運なのか、しがみ付く形で残った。「敗戦を覚悟していたので、ツキを味方に『これで乗っていける』と思った」と選手たち。予選終了後の練習会場でリセットし、気持ちを切り替えて的に向かうと、自然とギアチェンジできた。
決勝トーナメントでは何度も1本差の接戦を勝ち切った。勝敗への執着よりも、的中数が格段に上がって「(大舞台で)自分たちの弓道ができた」と表情が緩む。決勝4巡目の残り5本。3中で追いつき、4中で逆転のシチュエーション。指導者やチーム関係者は「勝利の予感がした」と言う。それは積み重ねてきた経験値。普段の練習から試合を想定し、部内競争はどんな大会より緊張感が走る。レギュラー組でも結果が出なければすぐに外される。そんな部の伝統が彼女たちの力の源泉あり、折れない心を育てた。大河内監督は「最後まで集中力を切らさず、粘り強く戦ってくれた。積み重ねてきた『信じる力』が大輪の花となった」とたたえる。
選手たちは口を揃える。「先生や家族、部の仲間など多くの人の支えで目標を達成することができた。みんなでつかんだ日本一です」と。
豊橋商業高・間瀬泰宏校長「創立120周年の節目の年に、このような快挙を成し遂げ、学校全体で盛り上がっている。歴史ある伝統部としてさらなる活躍を期待したい」
