逆境乗り越え「よくぞここまで」全中陸上女子 800m 4位入賞

 伝えたいのは「あと一歩」ではなく「よくぞここまで」ー。今夏、山口県で開催された全日本中学校陸上競技選手権(全中陸上)の女子800mで、羽田中3年の羽田野晴加さんが決勝レースで2分11秒53をマークし4位入賞した。掲げていたのは1年前のリベンジ…ではない。怪我から復調して「もう1度あの舞台で走りたい」だった。表彰式では自然と笑顔がこぼれた。メダルには届かなかったが、胸には苦難を乗り越えてつかんだ“自分色のメダル”が輝いていた。

羽田中3年 羽田野晴加さん

全中陸上女子800mで4位入賞した羽田野晴加さん

全中陸上女子800mで4位入賞した羽田野晴加さん

 キーワードは「怪我からの復活」。その道のりをたどる。全中挑戦の第1ラウンドとなる県通信陸上の予選で2分14秒97(参加標準2分15秒50)をマークし、早々と権利獲得。決勝は2分14秒91で2位。県総体で優勝すると、続く東海総体は決勝で2分14秒35をマークして大会2連覇を達成。徐々にギアを上げてタイムを縮めてきた。「強さが戻ってきた」は彼女を知る周囲の声。

 昨年は東海総体で2分11秒台を叩き出し、全中ではB決勝進出。秋にはU16陸上(ジュニアオリンピック)1000mで5位入賞(県中学記録、2分50秒32)を飾るなど、中距離ランナーとしての戦績は枚挙にいとまがない。序盤から仕掛ける“攻撃型”の走りと、逆算しながらシフトチェンジして最終盤に捕まえる“猛追型”の走りをレースによって組み立てる。スピードにキレがあり後半も回転数が落ちない。勝負勘や流れを読む巧さは、豊城中時代に800mと1500mで日本一に輝いたオリンピアンの鈴木亜由子選手に似ている。

快走する羽田野さん(写真は東三河通信より)

快走する羽田野さん(写真は東三河通信より)

怪我からの再スタート

 順調に距離を積んできたが、本格シーズン前の3月に疲労骨折が発覚。約3カ月間、走れない時期が続いた。補強や軽いジョグ、プール歩行などの土台づくりからリスタート。「この夏に懸けていたので、焦ったり後ろ向きになったりと気持ちのコントロールが難しかったですね」。それでも前だけを見て、その道に精通しているエキスパートらの助言を頼りに、じっくり時間をかけて再生。怖さはあったが、5月の公式戦(東三河通信)に間に合った。「自分1人だったらきっと諦めていたと思う。スタートラインに立てただけでもうれしかった。家族をはじめ背中を押してくれたすべての人に感謝です」

残り80mからの激走劇

 2度目の東海チャンピオンは復活の狼煙(のろし)。迎えた全中陸上。好調を維持し、戻ってこられた喜びでボルテージもアドレナリンも上昇。予選は2分13秒97で組2着。「決勝に残りたいという意識が強過ぎたのか、最後まで力が入ってしまった。でも(2分)13秒台はシーズンベストだったので上出来です」。全体の7位通過で翌日の決勝進出を決めた。

 先行型で攻めるか、猛追型を選択するか。展開予想図は頭にあったが、当たるとは限らない。出した答えは「流れに乗って(最後は)出たとこ勝負」。ナイター照明の入ったトラックに号砲が鳴り、高速ランナーのつば競り合いが始まった。200m過ぎに大集団が徐々に縦長になると、羽田野さんは5、6番手につけて攻めどきを探った。残り200mで先頭が吸収される形で6人がトップ集団を形勢。そしてホームストレートで最後の叩き合い。6番手から5位に浮上すると、ラスト2mで猛追の二の矢が刺さって4位フィニッシュ。荒い息を整えながら「自分に勝てた」と心の中でつぶやいた。

実力出し切り完全燃焼

 怪我からの再始動。思えば、最初の目標は「もう1度全中に出場したい」だった。そこから足し算ではなく「掛け算」のようなスピードで加速度を上げ、昨夏は進めなかった決勝のピッチに立った。「完全燃焼できました」と、表彰式では笑顔で賞状を受け取った。「でも」と付け加える。「右隣りの人のメダルを見て、ちょっと悔しかった」は本心だろう。自己ベスト(7年度東海総体、2分11秒09)の更新は次戦にお預け。人はジャンプするとき、重心を落としてバランスを取る。ヒザ曲げの体勢時にどれだけ力を蓄えられるか。迷ったり遠回りに感じた時期も、その経験こそが大ジャンプへの導火線になるはずだ。

 「まだあの頃の自分を超えていない」と、今後も中距離に軸足を置く。高校では「インハイなど全国を主戦場にしたいですね」。澄んだ瞳の中に芯の強さと闘志が映った。