男子800m 女子3000m陸の豊橋南インハイへ男女3選手
今年も南から風が吹いたー。今月30日から滋賀・平和堂HATOスタジアムで開催される全国高校総体(インターハイ)に、豊橋南高校から男女3選手が名乗りを上げた。山口獅恩君と小瀧直央君が男子800m、柳田麻央美さんが女子3000mに出場。全員、高校総決算となる3年生。好敵手としてしのぎを削ってきた2人が大舞台でどんな競演を見せるか。最後の大勝負で結果を出した長距離ランナーは上昇気流に乗っている。今号と次号の2回にわたって紹介。
認め合う良きライバル/互いの活躍が奮起剤
互いに意識し、刺激し合いながら潜在能力を伸ばしてきた。「好敵手」と認める2人は口を揃える。「彼がいなかったら、今の僕はなかった」
東海総体男子800m決勝。大集団が徐々に縦長に割れると、残り100mでギアを上げた山口獅恩が1分54秒42でフィニッシュ。県総体の再生ビデオのように一気のチャージで後続を引き離した。入賞を狙う小瀧直央は各県の実力者とともに猛追。残っている脚をフル回転させて1分55秒34で6位。「2人で決める」の約束を果たした。全国には届かなかったが、桜丘3年の松井蒼弥の7位(1分56秒09)も立派だった。
無名から東海頂点へ 山口獅恩君
中学までは全くの無名選手。それもそのはず、部活は陸上競技部だったが、ベクトルは硬式野球に向いていた。「(陸上の)大会に出場した記憶があまりなくて。顧問の先生に迷惑を掛けました」とバツが悪そう。「少し前まで自分が全国の舞台に立てるなんて想像もしてなかった」は正直な感想だろう。
陸上に軸足が向いたのは中学3年の時。体力強化を目的に駅伝大会の練習に参加し、思っていた以上に脚が動いた。東三河大会で1区、県大会では3区を担当し、突出したタイムではなかったが、競い合いの中で“闘走心”が芽生えた。決め手は校内で行われた1500m記録会。全中陸上に出場した同学年の2人には力負けしたものの、タイムに大きな開きはなかった。「気づくのがちょっと遅かったけど、本気でやってみよう」。卒業を前に気持ちは固まった。
高校で本格始動。800mと1500mを専門に脚力を磨いた。意識や姿勢は変わっても、練習の質、量とも中学時代とはレベルが違う。「これが全国を目指す練習なのか」と最初はついていくのに必死だった。1年夏の東三河総体は1500mに出場したが、終盤失速して7位に終わった。地道なインターバル走でスプリント力を強化。蓄えてきたスタミナと融合する形で2年の春先から800mのタイムが飛躍的に上がった。それでも1年前の県総体は1分57秒43の7位。インハイへの挑戦権を逃し「まだ気持ちも勝負への執着も甘さがあった」。この『あと一歩』から全国への思いが一層強くなったという。前半の入りやレースの駆け引きなどを肌感覚で学び、圧巻だったのは今年4月にあった豊橋リレーカーニバル。夏に向けて仕上がりをチェックする“力試し”の記録会でいきなり自己ベストの1分50秒82を叩き出し、周囲の度肝を抜いた。高校ランキングでも当時トップに躍り出た。以降は順位とともにタイムにも注目が集まる。
「先頭集団について仕掛けるタイミングを計り、ラスト300mでシフトチェンジ」が理想とするレース図。「最後の競り合いには自信があります」。1年前まで無印に近かった選手が、ブレない思いと地道な練習、そして周囲の支えを源泉に全国で表彰台を狙える位置まできた。インターハイに向け「決勝レースで1分40秒台を出して優勝争いに絡みたい」と真っ直ぐ前を向く。

県総体で先頭集団を引っ張る山口君(右)と小瀧君
全国目標8位入賞 小瀧直央君
身長183cm。スケールの大きなストライド走が推進力を生む。「結果が出なくて悩んだ時期もあったけど、いろんな経験が殻を破るきっかけになった」と口元を結ぶ。自己ベストは県総体でマークした1分54秒19。
牟呂中時代は200mと400mで走力を磨き、3年夏は400mで県総体B決勝(ベスト16)進出。部活を退いたあと、期限付きの駅伝部では長距離走の脚の運びや仕掛けるタイミングなどを学んだ。強力メンバーが揃った牟呂中駅伝部はこの年、県大会を制して全国大会に出場した。小瀧君は3区3kmを担当。「チーム順位も個人(区間)タイムも良くなかった。全国の強さに圧倒されました」
「もっと長所を伸ばしたい」と南高を選んだ。400mをメーンに、1年秋からは駅伝練習にも参加。800m転向直後の2年夏の県総体は1分57秒03で4位。続く東海総体は準決勝7位だった。駅伝メンバーとして東海大会を経験し、冬場も距離を積んだ。だが思うようにストライドが伸びず、記録と気持ちの足踏みが続いた。「戻ってきたな、と思えたのは東三河総体の直前ですね。それまではレースが怖くて」
同種目の山口君とは良きライバル関係。互いの活躍を奮起剤に切磋琢磨してきた。ここ最近は小瀧君が山口君の背中を追う図式。入学当初から立ち位置が少し変わったが「よし俺も、という気持ちにさせてくれる存在。足りない部分を引き出してくれたと思っています」と小瀧君。
インターハイでは「残り100mまで先頭集団に食らいつき、そこから限界突破したい。目標は1分51秒05と8位入賞」と照準を定める。
柳田さんの紹介は次号