ソフトで培った脚力ペダルに込めて 華麗なる転身 デビュー1年目の競輪女子選手に熱視線

 新たな自分を試したくてー。実業団のソフトボール選手からプロの競輪選手へ。1年目のルーキーシリーズで〝高速ダッシュ〟を決めた豊橋市出身の伊藤梨里花選手(28)。ソフトで鍛えた脚力を武器に、かましたり差したりと何通りもの戦略図を描きバンクを疾走する。来月は豊橋デビューが待っている。「厳しい世界だが、血が騒ぐという感覚に魅力を感じる。強気の走りで皆さんに応援してもらえる選手になりたい」

豊橋出身伊藤梨里花選手

ソフトボールから競輪の世界に飛び込んだ伊藤梨里花選手

ソフトボールから競輪の世界に飛び込んだ伊藤梨里花選手

 日本競輪選手養成所を卒業後、今年3月に松山競輪場でプロデビュー。続いて宇都宮競輪場、熊本競輪場と130期生のルーキーシリーズ(ガールズL級)に3戦し、いずれも決勝レースに残った。熊本シリーズは予選を1着で通過すると、決勝レースは一瞬のかまし(仕掛け)からトップスピードに乗り、逃げ切って優勝を決めた。戦績とともにファンも増え、大型新人として注目を集めている。

 「(ルーキーシリーズは)収穫とともに課題も多く見つけることができました。仕掛けのタイミングや駆け引き、ミドル系のスタミナなど、レースのたびに反省が残る。自分の武器であるスピードとダッシュ力を活かすため、さらに脚力を磨いていきたいですね」

 実業団のJDリーグソフトボールチーム「大垣ミナモ」に4年間在籍し、長距離打者として活躍。「新たな可能性に懸けてみよう」と一念発起して自転車の世界に飛び込んだ。養成所適正試験を受けるために約3カ月間、豊橋競輪場などでトレーニングを積んで肉体改造。見事一発合格し、デビューに向けて力を蓄えてきた。

長距離打者として活躍したソフトボール時代の伊藤さん

長距離打者として活躍したソフトボール時代の伊藤さん

 「短距離走の直線タイムは同期の中でも比較的良かったのですが、経験がないから最初はまっすぐ走れず、ひたすらバンクに乗って内外線間を走る練習からはじめました。養成所で最もきつかったメニューは5kmサーキットですね。峠のような険しい5kmの山道を8往復するんですが、肉体的にも精神的にも削られました。ソフトボールも自転車も重要なのは下半身。以前からウエートトレーニングで筋肉や体幹を鍛え、股関節、肩甲骨などの各パーツも細かくチェックしてきたので、それが今の土台になっているのだと思う。足りないのは勝負勘とスタミナですね」

 チーム競技のソフトボールと個人で戦う競輪。どちらも勝負の世界だが、競輪はプロとしての覚悟と重みが違う。

 「ソフトボールは自分がミスしてもだれかがカバーして空気や流れを変えてくれるが、競輪はすべて自己責任。結果を出せば人気も評価も上がるけど、その逆の覚悟もいる。シリーズで結果が出始め、人気の高かったレースを着外(3着以下)にしてしまったことがあって。車券がかかっているのでいろんな声が飛んできて、その日は眠れませんでした。『自分が試される』というのは喜びと同時に怖さもあります」

7月に豊橋デビュー

 ルーキーシリーズを終えて、これからは百戦錬磨のベテラン選手たちと競うことになる。豊橋競輪場(5~7日、ナイター)でのデビューも決まり、地元レースに期待がかかる。

 「ダッシュ力を活かした攻撃的なレースで地元の人を沸かせたい。ルーキー上がりは洗礼を受けることもあるが、失敗を恐れず攻め続けたい。昔から人一倍負けず嫌いなんです」

 リフレッシュ法は「実家で飼っている猫と戯れているときですかね。癒されますよ」

 描く未来図は「まだまだ夢の夢ですが、いつかは最高峰のガールズグランプリ(GG P)に出走したい。今の目標はG1レース(年4回開催)に出場することです」

 改めて競輪の魅力を。

 「意識と努力で景色がガラリと変わる世界。成績を残せば応援してくれる人が増えるし、獲得賞金(収入)も違ってくる。厳しい世界ですが、バンクの中には夢が詰まっています。この道を選んだことに誇りを持っています」