最高峰リーグでさらなる進化を 栄光と挫折の10年。「これが私の進む道」
栄光と挫折の競技人生。寄り道や葛藤もあった。その全てをひっくるめて「ソフトボールに出会って本当に良かった」ー。豊橋市出身で、女子ソフトボールの国内最高峰、JDリーグ・NECプラットフォームズ(本拠地/静岡県掛川市)に所属する長井美侑さん(28)=北山町=が、リーグ登録10年目を迎えた今も進化を続けている。「エネルギーチャージ」と、オーストラリアに渡ったのち、2025シーズンからJD.LEAGUE復帰。4月10日に開幕する今季は主将に抜擢され、若手の精神的支柱としてチームの出力を上げる。「ソフト一筋」の競技人生から得たものは。そして新たなビジョンとは。
女子ソフトJDリーグ/NECプラット所属 豊橋出身 長井美侑さん

JDリーグ・NEC所属の長井美侑さん
小学時代からスポーツ万能で勝ち気な性格。男子の中にいても目立つ存在だった。小学1年から白球を追った。兄の影響で軟式少年野球クラブ・栄ドリームズに入団し、球技のイロハを学んだ。高学年になるとチームの中心選手として活躍。投手兼捕手として戦績を残し、1学年下の中日ドラゴンズ藤嶋健人投手とバッテリーを組んだ時期もある。
豊橋南部中ではソフトボール部に所属。野球仕込みの堅守・巧打で早くから頭角を現し、主に捕手として一目置かれる存在に。投手の長所を引き出す配球術や戦略眼、そして仲間を鼓舞する統制力と「長距離砲の期待できる大型捕手」は県大会のたびに関係者の間で話題に上った。全国経験はなかったものの、3年時はU‒16日本代表に選出された。
「強豪校で自分を試したい」と、高校は全国常連の東海学園を選んだ。クラブ出身の有望選手が県内外から集まる中、1年からレギュラーポジションをつかむと、2年連続で夏の高校総体出場。3年時の滋賀インターハイ準優勝。2年時は国民体育大会(現国民スポーツ大会)少年女子で初めて日本一を経験した。
数々の実績を名刺がわりに卒業後は日本リーグ1部(当時、現JDリーグ)の戸田中央総合病院メディックスに入団。連日練習で実業団のスピードや心構えを吸収すると、3年目で5番・左翼手に定着。代名詞の強肩と巧みなバットコントロールでファンに名前を売った。2021年に同じ日本リーグ1部の大垣ミナモ(岐阜県大垣市)に移籍。2年目に新リーグJD.LEAGUEが創設され、東地区シリーズ(8チーム)でビッグカメラ高崎や戸田中央などと対峙した。だが、当時の大垣ミナモは成長途上の若手が多く、なかなか勝ち星に恵まれなかった。「キャリアが浅いから、接戦に持ち込んでも詰めが甘く勝ち切れない。勝負への執着心も足りない」と映った。負け数が増えるとチーム内の空気も良くない。3年間で結果を出せなかった己の戒めもあり、後輩に道を譲るように退団を決めた。

シュアなバッティングでチームをけん引。166cm。右投右打。
オーストラリアで「自分探し」の充電
ソフトボールとの向き合い方に迷っていたとき、学生時代の恩師の助言もあり、新たな魅力や発見を求めてオーストラリアへの“精神修行”を決意。2024年春から豪州クイーンランド州ブリスベンに約1年間滞在。同じ志の日本人とシェアハウスで共同生活を送りながら平日昼間は飲食店でアルバイト。土・日曜はオーストラリアリーグに参戦し、眩しい太陽の下で“週末戦士”として存在感を発揮した。リーグ全体のレベルが高いわけじゃないし、日本に比べ環境も設備も決して良くない。でも、選手1人1人が居場所を持っていて、練習も新鮮だった。「『ゲーム』や『プレー』は本来遊びからきていて、楽しむものだと改めて感じた。実りある自分探しの旅でした」
様々な角度からソフトを学び、心の充電もできた。帰国後、キャリアが認められて2025シーズンからJDリーグ復帰。NECではプレーイングマネージャー的立ち位置で若手の育成にも力を入れる。「個の力がチームを育て、チーム力が個の潜在能力を引き出す。そこが競技スポーツの素晴らしさですね」。ベテランになった今もソフト漬けの毎日だが、休日は一緒に暮らす猫1匹と愛犬2匹と会話しながら癒しの時間を過ごす。
NECは昨シーズン東地区10勝19敗で6位。シリーズでは星は伸びなかったが、全日本総合選手権(皇后杯)では3位に輝いた。長井さんは捕手兼外野手登録で、打はDPでも勝負強さを見せた。今シーズンは「打率3割、15打点、3本塁打」を目標に掲げる。開幕戦(第1節)は4月11日午後2時から大垣市北公園野球場で古巣の大垣ミナモとマッチアップ。苦楽を共にした後輩もいるが「手加減なしに叩きのめしにいく」。6月までの前半戦で好位置をキープし、9月再開の後半戦は勢いを加速させてプレーオフ進出を目指す。地元開催も予定されており「多くの人に女子ソフトの迫力やスピード感を観てもらいたい」。新年度を前に、次世代プレーヤーには「どんな競技でも『好き』が上達への近道。道に迷ったり、心が折れそうになることもあると思うけど、それを乗り越えることで新たな景色が見えてくる。夢を形にするのは自分次第」と言葉を贈った。
