"変化"求め復活へのスタートラインへ ジュニアオリンピックカップ女子100m出場

 全国に潜む魔物に何度も苦しめられ、辛酸をなめた。ソッポを向かれても「強くなるための試練」と自身に言い聞かせ、トラックに戻っていくー。時習館高1年の榎本実莉さんが、今月17~19日に三重県の三重交通Gスポーツの杜伊勢陸上競技場で開催されるJOCジュニアオリンピックカップ陸上(U16陸上)に出場する。種目は100m。6月の大会で左太ももを負傷し、今もリハビリが続く。完全復活にはほど遠いが「出場権利を得た以上、自分史に足跡を残したい」と、前だけを見据える。

時習館高1年 榎本実莉さん

今月、三重県で開催されるU16陸上に出場する榎本実莉さん

今月、三重県で開催されるU16陸上に出場する榎本実莉さん

 資格対象競技会は5月31日、6月1日に行われた東三河陸上競技選手権。100m予選で12秒21をマークし、設定枠のターゲットナンバー(出場できる上限/40人)で上位にランクイン。さらに大会規定には「2種目で参加標準を突破した者」とあり、同選手権の走幅跳で4m84を跳び、2つの条件をクリア。2年連続でジュニア五輪切符を手にした。

 3歩進んで2歩後退ー。つねにケガと背中合わせだった。高速スプリンターとして全国デビューしたのは中学2年の夏。県通信で標準を突破して愛媛全中(全日本中学総体)に出場したが、レース前々日に体調を崩し、無念の予選落ち。リベンジを誓った翌年の福井全中は、大会6日前に右太ももを肉離れ。バンテージを何重にも巻いて出場し、B決勝12秒38で3位(総合11位)だった。自己ベストはこの年の県通信決勝で出した12秒11。同予選で追い風参考ながら11秒台をマークしていただけに、順位の上積みも十分期待できた。

抜群のスプリント力で中学時代から全国を主戦場にしてきた(写真は中学3年時)

抜群のスプリント力で中学時代から全国を主戦場にしてきた(写真は中学3年時)

 昨年のU16陸上もそう。好調を維持して表彰台を狙ったが、2週間前に新国立競技場であった都道府県対抗リレーフェス(県選抜2走)で左脚を負傷。納得の走りができなかった。試練はまだ続く。時習館高入学後、インハイを視野にギアを上げた東海総体4×100m予選。2走を担当し、中盤までスピードに乗ったが、残り30mで突然下半身に激痛が走り、左太ももを肉離れ。何とか3走にバトンをつないだものの、車椅子の上で涙が止まらなかった。

悔しさを肥やしに

 走るのが怖くなり「陸上に向いていないのかな」と、心に穴が空いた時期もある。本来の走りは、力強い飛び出しから一気に加速し、後半もピッチが落ちない先行突破型。強心臓に万馬力のエンジンを搭載した弾丸スプリンターというイメージだ。迷惑を掛けたくないと、今は部活と距離を置き、下半身強化の筋トレや病院でのリハビリに時間を割く。着地面の感触が戻り、ジョギングからスピード練習に切り替えたのはほんの1カ月ほど前。まだ怖さは残る。今月4日の東三河記録会にエントリーしていたが、悪天候のため出場を断念。医師からも止められた。だから、U16陸上はぶっつけ本番。回避という選択肢もあったが「勝負にならないかも知れないけど、自分の走りを取り戻す一歩になるかも。全国には忘れ物ばかりしてきたから、取り戻すためのプロローグです」。

 卓越した爆発力を持つ韋駄天ランナーだが、大輪を咲かすのはまだ先。今はもがき苦しみながら競技者としての土台をつくっていく時期。蕾(つぼみ)は花開くと信じ、心と体の回転数を上げていく。