"的心"射抜き高校チャンピオン
「ありがとう」を強さに変えて、有言実行Vー。豊橋商業高校3年の野本歩夢君は、長崎県島原市で開催された全国高校総体(インターハイ、北部九州総体)の弓道競技男子個人戦で優勝を飾った。過去団体戦での全国制覇はあるが、個人での日本一は男女合わせて初の快挙。「応援を力に120%の実力を発揮することができた。(優勝を)口にはしてきたが、まさか実現できるとは。自分が1番驚いています」と声を弾ませる。同部は団体戦、個人戦の男女4部門で全国に乗り込み、いずれも予選を通過するなど愛知県代表として胸を張れる成績を残した。
豊橋商業高 3年 野本歩夢君
苦い経験を肥やしに
インターハイ男子個人戦には96人が出場。野本君は予選、準決勝と4射皆中で順調に勝ち進み、射詰競射による決勝(44人通過)へ。外した時点で競技終了となる振い落とし方式で、4本目終了時で10人が残り、5本目から直径24㌢の八寸的(通常1尺2寸の36㌢)に変更。6本目で3人に絞られ「メダル確定」。あとはその色を競って弓を引き、7本目に他の2人が外す中、野本君の放った矢は見事的心命中。雌雄を決し、会場から大きな歓声が上がった。
競技中は気持ちのスイッチを入れ、ゾーンの中で「周囲を気にせず自然体で射場に立つことができた」と振り返る。1年生から団体戦のメンバーに抜擢され、昨夏の全国総体では団体3位に貢献。続く全国選抜では個人7位入賞を果たすなど、着実に場数と実績を積み上げてきた。

インターハイに出場した豊橋商業高弓道部の皆さん
的中率が上がったのは1年生の秋ごろ。だが、冬の県新人戦では団体メンバーとして期待されながら4本中1本も当てることができず、勝負の厳しさと心の甘さを知った。「結果を残すことが出来ず、先輩にも迷惑をかけた」。辛酸を肥やしに、日々鍛錬を心に誓って的と向き合った。朝倉千尋監督は「経験を積み、勝負勘を養っていく中で自分の『形』を確立し、試合で出せるようになった。苦い経験が成長へのカンフル剤になったようだ」と話す。
野本君が大前(1番立)を務めた団体戦は、予選20射14中で予選を通過し、決勝トーナメント一回戦の杵築(大分県)戦は14中で並び、競射の末に勝利。二回戦で宮島工を17ー11を撃破。三回戦で地元長崎の海星に14ー17で屈し、5~8位決定戦にまわって6位入賞だった。女子団体は予選を20射14中で通過したが、決勝トーナメント一回戦で熊本学園大付に3本差で敗れベスト32だった。女子個人戦に出場した西山凡渚(なな)さん=3年=は予選、準決と各4射3中で勝ち進み、決勝18人に残ったが、射詰1本目を外して入賞はならなかった。

競技に臨む男子団体チーム
中学時代は無名選手
「高校集大成の夏にこんなサプライズが待っているとは思っていませんでした」
高校チャンピオンの称号を手にした野本君は「中学時代の僕からは想像もつきません」と、表情豊かに目を丸くする。二川中時代から弓道部に所属していたが、東三河大会はおろか「市内大会でも賞状をもらった記憶がありません」。伝統の豊商弓道部で新たな弓歴をーと思いきや、入学当初は「簿記部」が第1希望だった。「クラスで仲良くなった子が弓道部を見に行こうというので、最初は付き添いのつもりで。でも、気が付いたら弓を引いていました」。土台から作り直して的中率を上積みし、3年後には信頼の厚いエースに成長。名前の通り一歩ずつ歩んで夢をつかみ取った。「あのとき誘ってくれた友人に感謝ですね」と、屈託のない笑顔を見せる。