見えぬ敵と対峙 己を磨く 居合道県段別選手権 破竹の8連覇

 豊橋市剣道連盟に所属する居合道7段の甲斐幹渉(まさたか)さん(44)が、10月3日に東京武道館で開催される全日本居合道大会に出場する。6月に半田市で行われた全剣連居合愛知県段別選手権で8連覇を達成し、出場資格を得た。代表選出は通算13度目。全日本大会に向け「武士道精神で修練してきた技(演武)を披露したい」と目の奥に力を込める。剣道・居合道教室の「練心会」で技を磨き、同会の福田朱里(あかり)さん(27)は同5段の部で準優勝した。

10/3全日本大会出場

精神を集中させて架空の相手と対峙する甲斐幹渉さん

精神を集中させて架空の相手と対峙する甲斐幹渉さん

居合道教室「練心会」甲斐幹渉7段

 居合道は、日本刀(模擬刀や真剣)を使い、架空の相手を想定して抜く・斬る・納めるといった動作を繰り返す伝統武道。剣道のように相手と直接打ち合うのではなく、心身鍛錬や人間形成を主眼に自分の心と向き合い、演武を通して〝道の心得〟を表現する。
 全日本大会の地区予選にあたる県段別選手権は、段外を含む段別トーナメント戦で覇を競った。7段の部を制した甲斐さんは、気勢や的確な刀さばき、技の連動性などで他選手を圧倒した。福田さんは5段の部最年少エントリー。男女の区別がないため、対戦相手は熟練男性がほとんどだったが、鋭さとしなやかさを融合させた流れるような演武で決勝まで勝ち上がった。「全日本出場まであと1勝だったので悔しいですね。まだ鍛錬が足りないと気付かせてくれました」と気持ちを切り替える。

心を無に雑念斬る

 練心会の居合道稽古は、桜武館(桜丘高体育館)で週2回、剣道教室の隣で行っている。剣道の「動」とは対照的に、張り詰めた「静」の異空間の中で刀に魂をこめる。必要なのは腕力ではなく、体の使い方やバランス感覚。立ち居振る舞いや集中力・精神力が身につき、年齢、男女問わず自分のペースで続けられるのが特徴だ。
 甲斐さんは5歳から競技を始め、40年近いキャリアを持つ。普段は人当たりのいい温厚な性格だが、刀を手にゾーンに入ると表情が一変。武士のような眼光とオーラで仮想の敵と対峙。「普段より体が切れている」「きょうは心が乱れている」と、自身と会話しながら雑念を斬る。
 福田さんは祖父母の影響で小学1年から日本刀を握り、高校まで部活で剣道、クラブで居合道と「二刀流」で自分磨き。2年ほど競技から離れた時期もあったが「(自分と)向き合う時間を大事にしたい」とハタチを過ぎて再び刀を手にした。稽古中はスイッチが入って無の境地に。「完成形がないのが居合道の魅力。集中力を養い、心身の充実感も味わえる。女性にもお勧めです」。刀を納めると、厳しい表情から笑顔に変わった。

県選手権で準優勝した福田朱里さん

県選手権で準優勝した福田朱里さん