南風に乗って夢舞台へ
花の都パリでオリンピック夏季大会が開幕した。国境を越えたスポーツの祭典。世界の超人たちが力と技を競い、どんな歴史と感動を紡いでくれるだろう。
豊橋南高OB 吉津拓歩選手、小川大輝選手
陸上競技に豊橋南高校出身の2選手が出場する。男子4×400㍍リレーの吉津拓歩選手(25)=ジーケーラインと、400㍍ハードルの小川大輝選手(21)=東洋大。先の日本選手権で吉津選手は400㍍決勝レース45秒96で3位。小川選手は400㍍ハードル参加標準ジャスト48秒70で2位に入り、日本代表に選出された。

吉津拓歩選手

小川大輝選手

2選手にエールを送る応援団員

高校時代の活躍や思い出を紹介する陸上部の黒田昭夫顧問
2人に共通するのは「反骨心」だ。吉津選手は南陽中で陸上競技と出合い、当時は跳躍種目に軸足を置いていたが、高校からトラックに転向。400㍍を専門に卓越した身体バランスと脚力でメキメキ頭角を現し、2年時にはインターハイを視界に捉えていた。だが、最終選考の東海大会でまさかの失格。捲土重来を誓った3年夏にインハイ出場を果たしたものの、日本一の称号を手にしたのは地元で競い合ってきたきた桜丘高の選手。実力は折り紙付きだったが、ムーブメントを起こすことはなかった。
スプリンターとして覚醒したのは大学進学後。1年時から4×400㍍リレーのメンバーに抜擢され、日本学生対校選手権(インカレ)3連覇に貢献。2017年日本選手権リレー競技でも優勝を飾るなど、東洋大の「マイル黄金世代」の一翼を担った。400㍍では昨年の全日本実業団、今年4月の出雲陸上で優勝し、ベクトルは完全にパリに向いた。
小川選手は石巻中で基礎を叩き込まれ、3年夏に400㍍で全中出場。高校で持久スピードを強化し、専門の400㍍とともにパワーと跳躍力を生かした400㍍ハードルでも存在感を示し、3年時のインターハイで6位入賞するなど、期待通りの活躍を見せた。
インハイ入賞を名刺がわりに東洋大の門を叩いたが、そこには陸上専門誌に登場するような実業団級の中距離ランナーがずらり。自信とプライドは瞬く間に消え、必死に格上選手の背中を追った。以降「掛け算」のような速さで進化を続け、1年時に国際大会(U20世界選手権)を経験。昨年は目標にしていた日本選手権を制覇し、海外挑戦への土台をつくった。
ともに高校時代は全国チャンピオンになれなかったが、当時の”下地”が太い根となり、大輪を咲かせる成長剤となった。角界で言うところの「(当時の)3年先の稽古」が結実した。
2選手は今月12日、揃って豊橋市役所を訪れ、その後、母校で行われた壮行会に出席。在校生や恩師らがエールを送った。吉津選手は「成績が伸びず何度も挫折を味わったが、もがき苦しんだことで今の自分がある。最高の夢舞台を楽しみたい」とあいさつし、小川選手は「世界のレベルを肌で感じながら、挑戦者として攻めのレースをしたい」と意気込みを語った。
男子400㍍ハードルは8月5日、男子4×400㍍リレーは同9日、それぞれ予選が始まる。
受け継がれる心のバトンリレー
吉津、小川両選手の足跡が残る豊橋南高陸上部は「公立の雄」と称され、毎年インターハイや国体、ユース選手権など国内主要大会に選手を送り込んでいる。今夏もトラック、跳躍の個人種目と女子リレー2種目がインターハイ切符を手にした。トラックの花形リレー競技は大会の規模に関わらず選手層の厚い私学が中心軸。豊橋南はその「包囲網」を突破して7年ぶり3度目のダブル出場を決めた。中学時代の個人戦績をデータ化すると、間違いなく私学勢の方が優る。それがチーム対抗のリレー種目になると「普通の公立校」に注目が集まる。

インターハイ予選の第1ラウンドとなる東三河総体・女子4×400㍍リレーより(南高ゼッケン9108)
練習トラック(グラウンド)はサッカー部やハンドボール部と共用。野球部の金属音も気にしなくてはならない。もちろん公立校の一般部員だから特待のような優遇枠はない。さらに言えば文武両道が1丁目1番だから、練習は量より質が求められる。部員1人ひとりが高い探究心と主体性を持ち、己を鼓舞しながら未来展望を描く。「環境を言い訳にしない」が、受け継がれるバトンリレーの源流だ。
東海大会で優勝した4×400㍍リレーは全国ランキングでも上位に位置し、表彰台の期待がかかる。エースでメンバーの精神的支柱でもある眞田あこさん(3年)は「気持ちでバトンをつなぎ『南旋風』を起こしたい」と言葉に力をこめる。