chigiri vol.193 Instagram インフルエンサー とよスイーツ 大谷 綾子さん
まちの魅力は、誰かの“好き”から動き出す。
東三河を発信する、とよスイーツの挑戦。
Instagram インフルエンサー とよスイーツ 大谷 綾子さん
地方都市における価値のあり方が、静かに変わり始めている。かつては大型商業施設や有名チェーンが集まることで「便利なまち」と評価されてきたが、近年では均質化が進み、どこに行っても似たような風景が広がるようになった。一方で、個人の発信によって埋もれていた店や文化が再び注目を集めるなど、小さな魅力が再評価される流れも生まれている。情報があふれる時代だからこそ、誰が、どの視点で発信するのかが、まちの印象を左右するようになっているのではないだろうか。
そんな中、東三河を拠点にスイーツや飲食店の情報を発信する女性がいる。Instagramのアカウント名『とよスイーツ』でお馴染みの大谷綾子さんだ。好みのスイーツはもちろん、年間130枚以上のクレープを食べる際立った行動力と糖質愛。常時ダイエットが欠かせないという大谷さんは、自らを“東三河食いしん坊大使”と称し、息子で相方のちびスイーツくんとともに配信する軽快でユーモラスな投稿で、多くのフォロワーを惹きつけている。その活動は単なるグルメ紹介にとどまらず、個人の“好き”を起点に、まちの魅力を掘り起こし、人と人をつなぐ役割を果たしている。
「昔の豊橋はハイセンスで煌びやかなまちでした。それがいつしかマンションの立ち並ぶ住み良いベッドタウンに…。今はインターネットで商品を買い、体験まで出来る。時代的に仕方ないのですが、でもやっぱり寂しい!まちに住む人、訪れる人が“楽しいな!”って思えることがしたいんです」。
もともと東三河で生まれ育った大谷さんにとって、あの頃の豊橋は身近でありながら憧れのまちでもあった。しかし今の駅前にはその面影はなく、どこか物足りなさを感じていたという。家族で出かけた百貨店や、週末に並んで食べたクレープなど、日常の中にあった小さな楽しみも、少しずつ姿を消していった。気づけば「ここで働きたい」と思える場所も見つからなくなっていたそうだ。
まちを盛り上げたい!女性が働きたいと思える場所を増やしたい!ただの主婦の私が何かを変えるには、たくさんの人に支持されなければ!」。その思いから日記感覚で始めたInstagramは、やがて多くの共感を呼ぶようになる。人気店からディープなスポットまで足を運び、飾らない言葉で魅力を伝える投稿は、次第にまちの情報源としての役割を持ち始めた。さらに近年では、企業や店舗と連携したイベントや商品企画にも関わっており、クレープを軸にした「東三河クレープ愛好会」創立者としての企画や地域を巻き込んだ取り組みは、単なる情報発信を超えた「場づくり」へと広がっている。
東三河を「女が金を掴んで経済をかき乱す街」にしたいという大谷さん。その言葉の奥には、地元で働き、挑戦できる環境をつくりたいという強い思いがある。好きなことを続ける中で見えてきた地域の可能性と課題。その両方に向き合いながら、大谷さんは今日も発信を続けている。
一人の“好き”から始まった小さな行動は、やがて人を動かし、まちの空気を少しずつ変えていく。『とよスイーツ』という存在は、これからの地域のあり方を示しているのかもしれない。

豊川市制施行80周年記念イベント出店時エディブルフラワーのクレープ。
クレープから始まった“好き”が、
人とまちをつなげていく。
家族と過ごした週末の記憶も、青春時代の甘酸っぱい時間も、いつもそばにはクレープがあった。好きなものを発信し続けた先で、人とつながり、まちへの想いも形になっていく。ユーモアの奥にある、優しさと芯の強さ。その原点と未来への思いを聞いた。
クレープは、思い出そのもの。
小さい時の思い出って、やっぱり食べ物とセットなんですよね。ちょっとおめかしして家族で出かけた百貨店。お利口にしていたご褒美は、大好きな『ロジャー』のクレープでした。学生の頃も、友達と恋バナしながらクレープを食べていて。内容は覚えていないんですけど(笑)。私にとってクレープは、家族団欒の温かな思い出や青春の甘酸っぱい記憶そのものなんです。
今は便利な時代になったけど、あの頃みたいな活気というか、ちょっと背伸びしたくなる感じがなくなっている気がして。だから、私の愛したクレープがまちの起爆剤になればいいなと。このまちの魅力が、たくさんの人に届くように。
想いは巡り、やがて循環していく。
最初の頃はプライベートな内容も載せていました。人生で二番目に辛かった不妊治療のことも。ちなみに一番は、前職のアパレル企業なんですけど(笑)。そしたら、同じように悩んでいる方からメッセージをいただくようになりました。あるイベントで、ベビーカーを押しながら来場してくれたママさんから、「あの時、相談して授かった子です」って。言葉にならないくらい嬉しかったですね。
母から「周りの人を幸せにすることで、自分に返ってくる」って言われて育ちました。反響はどれもありがたいのですが、人と繋がれたと感じる瞬間は、一層心に沁みます。何かを与えているというより、結果的に誰かの役に立っていて、それが感謝として返ってくる。その循環を生んでくれるのが『とよスイーツ』なんです。
まちを面白くするのが、一番の近道。
「東三河は、日本一おいしいクレープがあるまちにしたい」。本気です(笑)。全国的に流行っているパリパリクレープも、火付け役は東三河なんです。“#東三河クレープ愛好会”で、クレープを使ったまちおこしが出来たらと、考えています。
私はインフルエンサーではなく、ちょっとガッツのある豊橋市民で、ただの主婦です。収益よりも、どれだけ多くの人に支持してもらえるか。言葉に影響力を持った、その先が大切。インスタグラムで何かカタチに出来れば、自分の思いを実現できるはず。何をするのかは模索中(笑)。
愛する家族が豊かに暮らすためには、まちが豊かでなければなりません。だからまずは、まちを面白くすること。それが一番の近道だと思っています。この活動をきっかけに、まちの女性たちが一歩踏み出し、お金を掴めるようになったら嬉しい。この循環が広がれば、もっと魅力的で、楽しい豊橋になると確信しています。
イベント情報

三遠ネオフェニックス仙台戦
とよスイーツ監修 クレープ時々カレーフェスタ
4月12日(日)豊橋総合体育館 隣芝生広場
《出店店舗》
・ゆたかなクレープ(大阪)
・るんるんクレープ(三重)
・コフレドエメ(奈良)
・松井産業
・Smile cafe
・THE Banana
・クレープ ウフ
・ディムのスリランカカレー(名古屋)
・アイカレー(静岡磐田)
・コスキッチん

クレープ時々カレーフェスタで限定販売される、松井産業のオリジナルクレープ。
おおたに・あやこ さん プロフィール
1984年、広島生まれ。小坂井中学校、蒲郡東高等学校出身。進学した短大では服飾を専攻し、卒業後は名古屋の大手アパレル企業に就職。およそ10年勤務した後、結婚を機に退社。家庭を守りながら短期バイトを重ねる中で、活気が失われつつある豊橋のまちに疑問を抱き、「自分にできることは?」と模索。影響力のある発信者を目指し、2019年からInstagramを開始。現在はSNS発信にとどまらず、企業や店舗とのコラボ企画や商品開発、イベントの企画運営など幅広く活動。ベーカリーショパンとの共同開発による「とよクリーム」の販売をはじめ、地元店舗とのコラボ商品やイベントを多数手がける。クレープを軸にしたフェスタの開催やスポーツイベントとの連携など、地域を巻き込んだ取り組みも展開。コロナ禍をきっかけに人とのつながりを広げ、現在では行政や企業からSNS活用や動画制作の依頼も受けるなど、活動の幅をさらに広げている。
