スポーツ春秋
「今でも間違っていたと思うよ」。引退してもう十数年。中学校の陸上部監督として多くのトップ選手を育て、強豪校に送り込んだ名伯楽が「後悔」を口にする
▼特に駅伝の指導には定評があった。転勤するたびにその学校を強くし、カリスマ的存在だった。強くしたい一心で、即効力のある鉄拳を選んだ。自身も若かったし、昭和の容認期だからそれが通っていた。ただ「勝っても面白くなかった」
▼本当は野菜や草花を育てるように「地を耕して種を蒔いて、水や日光を与えながら個性を伸ばしたかった」。それを許してくれない空気をつくったのは自分なのだと、時代や周囲の変化で気付いた
▼今、児童クラブでおじいちゃん先生として人気者だ。「本音を言うと、こっちの方が自分の性格に合っているんだよね」。太いシワに功績は残るが、当時の部員に見せてやりたい笑顔だった。